ラブライブ!サンシャイン!!

「ラブライブ!サンシャイン」2期10話動画の感想 雨と車についての小考察と解題

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第10話「シャイニーを探して」

第10話は少し難しい回だった。車が空を飛んだり、都合よく雨がやんだりする。

この点に関してはやや読解が必要であり、それができなければ「意味がわからなかった」「滑稽だ」「現実にはありえない」程度の感想しか出てこないだろう。

そこで、このエントリーでは第10話の解題を試みる。

鞠莉の個人回だった

第10話EDのラストからもわかるように、第10話は鞠莉にスポットがあたった回だった。


© 2017 プロジェクトラブライブ!サンシャイン!!

第10話における彼女の中心心理は「ずっと一緒にいられますように」である。

彼女はこの言葉を第10話の冒頭(OPに入る前)に一度言っている。さらに果南の「何をお祈りするつもりだったの?」という問いかけに対して「決まってるよ!」とも言っていることからも、「ずっと一緒にいられますように」という鞠莉の願いが強いものであったことがわかる。

しかしそんな鞠莉の願いに対して試練がおとずれる…というのが第10話を読み解くための大前提となります。

一度バッドエンドを経験している

幼少期、鞠莉はよく家を抜け出して、果南とダイヤと3人で遊んでいたらしい。

まるで「ドラゴンクエスト7」のキーファとアルスとマリベルみたいだねww

幼少期の3人は流れ星にお祈りをするために高台を訪れたけれど、そのときは雨に降られて挫折していることが描かれていました。いわば一度「バッドエンド」を経験しており、そのルートをやり直しているようなイメージで今回の話を捉えるといいでしょう。


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鞠莉の「3人いれば何でもできるって、今の気持ちがあれば大丈夫だって、そう思えた」という言葉を試すがごとく、彼女の言葉の直後に雨が降りはじめますw

親切なことに、このアニメの脚本を書いた人は「もしかしたら、神様が願いを叶えさせたくないのかもしれませんわね」と、ダイヤの口を借りてわざわざ説明してくれている。

さらに、果南の口を借りて「これでおわりでいいの?」「3人いれば何でもできるって思ってたんでしょ」「それにいまはもう3人じゃない」「探しに行こうよ、私たちだけの星を!」と立て続けに言ってくれている。

そう、一度経験したバッドエンドを乗り越えるべく!次はグッドエンドを迎えるべく!3年生の3人は駆け出すのです!!

バッドエンドを乗り越える鍵

3年生の3人では成し遂げられなかったことを成し遂げる鍵は、「3人ではなく9人でやること」だった。

「探しに行こうよ、私たちだけの星を!」と果南は言っていたけれど、作中で同じようなことを言っている人物を1人だけ知っています。そうです、高海千歌です。千歌はいつも「私たちだけの輝きを!」と言っていた。


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2期10話の最後に千歌が「私たちだけの輝きが、見つかりますように…」と言っていたことからも明らかだけど、3年生にとっての「星」と、千歌の言う「輝き」とは、同一のものを指しているのである。

10話のタイトルが「スターを探して」ではなく「シャイニーを探して」であったのは、Aqoursが探していたのが「輝き」だったからに他ならない。

端的に「2期10話における星」=「ラブライブサンシャインにおける輝き」です。

したがって「3年生が星を見つけられない」ということは、「Aqoursが輝きを見つけられない」ということを表現している…と読むことができる。

もっといえば「3年生が星を見つけたら、Aqoursが輝きを見つけられる」ということでもある。

なぜ車が飛んだのか?

「星=輝き」を見つけられないAqoursのなかで、真っ先に「星」を見つけた人がいました。高海千歌です。

曜でもなく、梨子でもなく、ルビイでも、花丸でも、善k…ヨハネでもない。千歌が「星」を見つけた。

これがとんでもなく重要で、このシーンは千歌が「星=輝き」を見つけて方向を指し示し、みんなが「星=輝き」の方向にむかっていったことの表現なのであった。それは今までのAqoursの活動にピッタリ符合します。

2期10話において星を見つけにいくことは、このアニメにおけるAqoursの活動の比喩である…ということさえわかってしまえば「なぜ車が飛んだのか?」を理解することができてしまう。

つまり「車が飛んだ」のは「奇跡を起こした」ことの比喩なのですよ。


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大前提として、9人は実際に空を飛んだわけではない。というのも、車が空を飛んだカットから、場面が切り替わることなくそのままカメラが下に向かって、9人を乗せた車が雨の降る山頂にたどり着く構図になっているから(これは絵コンテかいた人がうまいと思う)。

車が飛んだ時点では、まだ雨もやんでいない。そこからわかるのは「空を飛んだ」のはある種の比喩なのだったということだ。

天候なんてのは「理不尽」の典型です。自分たちの力じゃどうしようもない。それが天候です。その天候すら超越して、その先に「星」をみつけたのは「奇跡」とでも呼ぶに相応しい。

天候を乗り越えて車が飛んだのは「Aqoursが理不尽レベルの障害を乗り越えてみせた」ことの表現だ…と読むことができる。そこから見える景色は、さぞかし素晴らしいものだったことでしょうね…。

なぜ雨が止んだのか?

「2期10話における星」=「ラブライブサンシャインにおける輝き」であることを理解すれば、「なぜ雨がやんだのか?」についても理解することもできる。雨がやんだのは「強い願いが叶う」ということを表すものだったのでした。

第10話における雨は「星を見つけること」を阻むものであり、したがって「ずっと一緒にいられますように」というお祈りを阻むものでもあった。

容赦なく降る雨を目の当たりにして、「無理なのかな」と諦めかける鞠莉だったけれど、そこで沈黙を破るのはやっぱりいつだって千歌なんですよね!


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3年生の3人(鞠莉、果南、ダイヤ)ではなく、千歌だった。言い出しっぺは千歌だったわけです。

他の誰でもなく千歌が「晴れるまで、もっと遊ぼう!」と言って諦めないであがいてみた。9人であがいてみた。すると雨が止んだ!

雨がやんだということは流れ星が見つけられるということであり、流れ星が見つけられるということは「ずっと一緒にいられますように」という願いが叶うということでもある。

鞠莉はイタリアの大学に、果南はインストラクターの資格をとるため海外に、ダイヤは東京の大学に。いったん離ればなれになることは決まっている。

「Aqoursの終わりが近い」というのは3年生だけじゃなくてみんな一緒。学校がなくなり、制服も教室もかわる。

でも、雨がやんで流れ星が見つけられたのだから、きっと9人はまたどこかで一緒になれる。「ずっと一緒にいられますように」という願いは、9人でなら叶えられる。雨がやんだのはそんな暗示でもあったのかもしれません。

ふりかえりと今後のストーリーについて

残り2-3話しかないのに、一見すると無意味そうな日常個人回。


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しかし、それにはちゃんと意味があった。「どんな理不尽があっても、自分たちの輝きを見つけられる」という今後の展開を暗示する回だったと思います。

そうですね…いままで見たアニメだと『交響詩篇エウレカセブン』のサッカー回(39話)が近いんじゃないでしょうか。

コミュニケーション不全に陥っていたレントンとエウレカが協力し、ホランドという大きな存在を乗り越えて、絶望的な状況の中でも目的の1ゴールを決める。あの回は「エウレカセブン」のアニメ全体のプロットを1話分に凝縮したものになっています。

この回も同じで、アニメ「ラブライブサンシャイン」のプロットを1話に凝縮したものになっていると思う。千歌が方向を指し示して、9人が理不尽にもめげないで奇跡を起こす。そんな今後の展開を予感させてくれる回でもありました。

きっと9人だけの星が見つかることでしょう。