2018年春アニメ『ヲタクに恋は難しい』をご存知だろうか。このアニメはハッキリ言って好き嫌いが激しく別れるアニメだ。
そして嫌いな人は「成海にイライラする」という人と、「オタ恋」の世界観にイライラするという人の2種類に大別されると考えられるので、その2つをわけて考えてみたいと思う。
成海にイライラする
「日向」のオタクだから
日向の人間と日陰の人間は相容れないものなんです。もっといえば「陰キャと陽キャ」って次元の話(この言い方はあんまり好きじゃないけど)。
成海が嫌い、成海が好きになれないという人は、成海が日向の人間であろうとしている点が好きになれないんじゃないでしょうか。
キラキラしたOLがオタク #とは ©ふじた・一迅社/「ヲタ恋」製作委員会
特にオタクというのは日陰の人間であるべきだ…という考え方を持っている人も決して少なくないはず(自分もどちらかと言えばそういう人間ですが)。
そういう信仰を持つ人にとっては、成海が「日向の人間」であることに対して嫌悪感を感じさせるのかもしれません。
オタクが迫害されるのが当たり前の存在の時代の人間だから、げんしけん二代目やデンキ街の本屋さんとかの「オタクだけど屈託なくアニメの話して恋愛もするキャッキャウフフ集団」を見ると「昔はオタクだと肩身が狭くてねぇ…」と戦時中に食料が無くて辛かったことを延々と語る老人みたいになってしまう
— ✖♥ワイワイちゃん♥✖ (@subnacchi) October 6, 2014
「成海が嫌い」という人には、ちょっと想像してみてほしい。
- 周りにオタ隠ししつつ、明るく振る舞うオタク
- 周りにオタ隠しせず、明るく振る舞うオタク
たぶん、どっちも嫌いでしょ?
ということは、こういう人たちにとって「成海がオタクであるかどうか」はあんまり関係ないんだと思うんですよ。それよりも「成海が日向の人間(陽キャラ)だから嫌い」だ…ということが問題です。
「ヲタ恋ダンス」をやってるのも1つの原因でしょうか。
『逃げるは恥だが役に立つ』EDのダンス「恋ダンス」に対して、『ヲタクに恋は難しい』OPのダンスを「ヲタ恋ダンス」って言ってるのおもしろすぎる。
— イエロー (@inahime_poke) April 23, 2018
たぶん、文化祭で「ハレ晴レユカイ」を踊るオタクたちに対して嫌悪感を抱くような人は、このアニメも無理だと思う。
リアルの会話でネットスラング
ネットスラングをリアルで使うというのも、成海が視聴者をイライラさせる1つの要因かもしれない。
- ついでに腐っているのか
- 古の名はやめて
- wwwww
- それな!
- ひろたかどん
- これで勝つるわ
…など、リアルでそういうこと言っちゃう?って考えの人もいるでしょう。
ヲタ恋が嫌いというか肌に合わない理由は個人的に某所発のネットスラングを商業誌でやる事自体好きじゃないのとそのノリを日常会話でやるのは漫画でも無しだと思ってるからですが、アニメ化のおかげで同じような事思ってる人を見つけてちょっと安心
— こはらまる (@imo06) April 17, 2018
某所ってより、半分ぐらいはTwitterのような気がしなくもないけど()
彼氏遍歴自慢
成海の言動のなかで地味に「イラッ☆」とくるのが、「過去に彼氏いた」アピールじゃないだろうか。
宏嵩に対して「なーに、いつの彼氏の話してんの?」とかがまさにそうですよねw
そのあと職場の同僚と付き合っていたことをサラッと言っちゃったり、「なんで…いつも間違えちゃうんだろ」とか思わせぶりなこと言ったりしてる。
そしてその宏嵩に対して、メガネをクイーっとあげてマジマジと見つめてみたり、「お願い!助けて宏嵩!!」とせがんでみた、明らかに好意持ってるだろみたいなアプローチを仕掛けるのもイライラするポイントなのかもしれない。
(付き合って)ないです ©ふじた・一迅社/「ヲタ恋」製作委員会
「恋愛対象としてみていない」「オタ友達」と成海は堂々と言うけれど、まあ傍から見れば恋愛に見えるわな…って感じ(ただし当の本人たちは恋愛って感じでもなさそうなのが本作のおもしろいところなのかもしれない)。
同族嫌悪
同族嫌悪している成海(同族)をオタク(視聴者)が嫌悪している…という人も一定数いそうですねw
宏嵩「オタクに理解のある人を探すってのはダメなの?」
成海「だめに決まってんでしょ!理解あるってことはそいつもオタクじゃん!オタクはキモいからイヤだ!」
宏嵩「でた〜〜〜自分のことは棚に上げちゃう系腐女子だ」
※アニメ第1話より引用
あと、大きな括りで見れば同族(オタク)でも、「腐女子」というだけで敬遠する人も一定数いてそう。
作品の世界観にイライラする
リアリティがない
『ヲタクに恋は難しい』というアニメに対して、登場人物や世界観にリアリティがない…というツッコミをしている人もチラホラ見かけました。
そもそもがフィクションである「TVアニメ」という表現に対して、何をもってリアリティとするかは難しいところだけど、感想を見ているとこういう指摘が散見されます。
- 身近な人(同僚や幼馴染)にヲタクの友人や知人が多すぎる
- 登場人物たちがみんなそれなりに美形
- 付き合うまでがチョロすぎる
オタクってのは基本的にコミュ力がなくて、容姿もよくなくて、それゆえにぼっち…という前述の表現で言えば「日陰」の人間に該当するような人が想定されがち。
仲良さそうだなおまえら ©ふじた・一迅社/「ヲタ恋」製作委員会
ことごとく登場人物がそういう人たちではなかったことに対して「これはオタクではない」→「リアリティがない」という考え方に繋がるんだと思います。
ヲタ恋、面白いんだけどさ どーしても、どーーーしても 『二人の見た目も濃いヲタクにしてほしかったなぁ…』と思ってしまう。なんか登場オタがみんな見目麗しすぎて違和感が… いや、そんなリアリティ誰も欲してないか(T∀T)
— ミッキー@アップ…ダウン…アップ… (@mikirokku) March 1, 2016
ちなみにこんな人もいました。
ヲタ恋で一番イライラするのは会社がホワイトすぎること
— ちかこ (@ha_chika) April 14, 2018
これは悲しい()
ヲタクという表記
自分はこの「ヲタク」という表記が嫌いです。
「ヲタク」は基本的に1人称(自分を指した状況)で使われることが多い。自分を蔑むような使い方が散見されます。
「ヲタク」と「オタク」を区別しようと躍起になる人もいるみたいだけど、結局どっちも変わらんでしょ。大差ねーよw
わざわざ自分は「オタクじゃなくてヲタクだ!」と表明しているようなものであって、それ自体が気持ち悪いと思う(このアニメ自体は嫌いじゃないけど、この表記は本当に嫌い)。
1話からつき合ってる
タイトルが『ヲタクに恋は難しい』なのに、1話からいきなり2人は大した障壁もなく付き合っていて「恋は簡単じゃないか!」と感じた人は少なからずいた様子(Twitter調べ)。
「リアリティがない」という話とも少し重複するかもしれませんね。
そんな簡単に恋人できたら苦労しねーよって感じ。
このアニメとどう向き合えばいいのか?
以上、「」についてまとめてみました。
ここからは「このアニメとどのように向き合えばいいのか?」について考えてみたいと思う。
ファンタジーとして捉える
このアニメに「イライラする」という人にとっては、多くの場合「オタク」「会社員」という共通項があるからこそ、現実とフィクションの世界とを混同してしまっているように思います。
これって、学生とか専業主婦とかニートとかが見たら、わりと「ふーん」って思うんじゃないかな。
本作はフィクションなのに、題材として「会社員」「オタク」という属性のある作品だから、「ヲタ恋」をフィクションとして見ることができないんだと思う。
「ヲタ恋」を見て「オタクの恋愛はそんなイージーゲームじゃない!」って言ってるのは、「こち亀」見て「警察官はそんなにふざけてない!」とか言ってるようなものだし、「サーバント×サービス」見て「公務員はそんなに楽じゃない!」とか言ってるようなもの。
というわけで、この作品を「どこか異世界のもの」、もっといえば「異世界転生ファンタジーもの」として捉えてみるとそんなにイライラしないはず。
会社員生活を「異世界モノ」として捉える ©ふじた・一迅社/「ヲタ恋」製作委員会
そんな世界もあるんだなーと、ゆるく構えて見ることをオススメしたいと思います。
こち亀でも見るみたいに、完全な作り話として見るといいよ!
ラブコメとして今後の展開を楽しむ
このアニメを見てイライラする人は、本作における「恋は難しい」の「恋」についての解釈を変えるべきなのかも。
付き合い始めたら「恋」がゴールだと思う人にとっては、1話から付き合い始めるなんてのはありえないわけだけど、付き合い始めてからも色々と山あり谷ありなのが「恋」ってもんだと思います。
EDの歌詞に注目してみると、「恋人になった」がゆえに何か特別なことをしなきゃいけないのか…など、距離感で2人が今後悩むんじゃないだろうかということが推測できます。
今までお互いが趣味に当てていた時間やお金をデートに変えなきゃいけないの?とか、そういう壁にぶち当たっていって「いや〜〜やっぱオタクに恋は難しいっすわ〜〜〜!」って状態になることをコミカルに描いてくれることでしょうw
付き合い始めても距離感が変わらない、恋人らしいことをしないままに関係性が続く…というのは、例えば「中二病でも恋がしたい!」で富樫勇太と小鳥遊六花を思い起こさせますね。
ちなみに、成海は宏嵩に対して「まんざらでもない」みたいな様子でした。
実況民や、セリフ回しにばかり気を取られているアニメ視聴者は見落としているかもしれないけれど、成海が「採用!」って言う前に、ときめいてる描写があるんですよね。
キュンときてる成海 ©ふじた・一迅社/「ヲタ恋」製作委員会
セリフですべてを語らなければいけないなら「アニメ」である必要がない。アニメである以上、ノンバーバルの領域にも必ず表現ってのは存在しています。
そういうところも楽しみながら、このアニメを「異世界ファンタジー」として捉える。そういう提案をしたいと思います。
それでは今回はこれにて〜。