前回のおさらい
八雲師匠は死んでしまった。そして死後の世界で助六とみよ吉とも出会い、最後にはお話をすることができたのだった。集大成としての落語をみよ吉、助六、小夏、そして信之助にも見せて、いよいよ菊比古は三途の川を渡る…。
昭和元禄落語心中 最終回
八雲師匠の死から17年が経った日のこと。信之助と、その妹小雪は、小夏や与太郎とともに落語に打ち込んでいた。時の流れに合わせて、老いも若きも、男女も、東西も、全てひっくるめて、落語の歩む道筋が示される。
信之助が大きくなってる!そして妹は「小雪」
いきなり大きくなった信之助が登場!携帯型音楽プレーヤーで生前の8代目八雲の落語を聞いていました。信之助は八雲プレイリストを作るほどの心酔っぷり!11話で八雲師匠が最後に寿限無を聞かせた甲斐があったってものですねw
信之助の妹は八雲師匠が亡くなった歳に生まれたんだから、17歳ってことになります。高校の制服来てて、小夏譲りの赤髪。
そして彼女の名前が「小雪」だったことにかなりゾクッときました。先代の助六は、夏に生まれたから小夏だった。冬に生まれたら小雪だ、と言っていましたからね。名前にも彼の気持ちををちゃーんと受け継いでいるんだなと思いました。
「聞き専」小雪
2人が喫茶店に行くと、小夏と樋口が2人で待機していました。17年も経つと、小夏さんもずいぶんといい「女将さん」って感じになっていますw
そしてやっぱり小夏さんは樋口の新作落語を練習していました。彼女も高座に上がるつもり満々ですね!「先生とお父さんが背中を押してくれた」と、八雲と与太郎のおかげであったこともハッキリ口に出しています。
生前の八雲師匠を知らない小雪は、八雲に心酔する信之助に懐疑的。「とーちゃんの落語が世界で一番好き!」と言い切ります。でも彼女はどうやら落語をやるのではなくて、聞き専っぽい。
信之助には、世間からの期待も集められているようで、それを樋口が指摘するのですが、「看板は大きいほど芸を磨かないと、お客様はまたいらしてくれません」と、いつぞやの菊比古のように淑やかに言ってみせます。いやはや名言。
信之助の本当の父親は…
信之助と小雪が喫茶店から出ていくと、ちょっと衝撃的なパートに入ります。
17回忌にあたって、樋口は八雲師匠の評伝の完成やコレクションDVDをリリースするまでに至った様子。それだけでも結構驚きましたが、さらに彼はぶっこんできます。
小夏に対して「信之助の本当の父は、組の「親分」ではなくて、八雲師匠ではないのか」と問いかけたのです。
憎しみ、執着、嫉妬、羨望。そんな複雑で言い表せない感情をまとめたら恋だったんだと小夏は言います。樋口の問いかけに対して肯定も否定もしていない。どうやら信之助の本当の父は、八雲師匠だったっぽいです。
となれば、信之助は信さんと菊さん(助六と八雲)という2人の噺家の血を継承した人間だということになります。これは最後の最後で本当に驚きました。(ただ、最初に信之助の存在を知ったとき、「父親は親分だ」と言われるまで、八雲師匠だとずっと思ってたので、ある意味収まるところに収まったかなとも思えました)。
信之助の髪がチリチリなのは、「親分」譲りではなくて、助六譲りだったのかもしれません。親分と八雲師匠が口裏合わせをしていた可能性は十分にありますからね。
9代目 有楽亭八雲
さらにもう1つ驚いたのは、与太郎が「9代目 有楽亭八雲」を襲名したことでした。先代の菊比古とはかけ離れた芸風ですw
「アカン、また腹たってくるわ」と萬月師匠が言うように、先代とのイメージが違いすぎることに違和感を持つ人もいる様子。しかし「有楽亭八雲」はビッグネームすぎて誰も継ぎたがらない。だから彼はやってくれたみたいですね。与太ちゃんイケメン。
そして彼が言うように「助六が八雲を次ぐ」というのが、何よりの供養なのかもしれません。
一方で、信之助は「10人抜き」で二枚目にスピード昇進。実力があってもビビリなのは八雲師匠そっくりかもしれません。
そんな彼に対して「迷ったらお客さんのためを考えなさい」という与太郎がかっこよすぎた。口元にもシワができていて、ある意味では貫禄を、ある意味では老いを感じさせられます。「助六」と書かれた扇子を渡しました。信さん→菊さん→与太ちゃん→信之助と、脈々と受け継がれていく扇子は、噺家の思いが受け継がれていく象徴ともいえるでしょう。
新しい寄席に、落語の新しい形
全焼してしまった寄席にかわって、新しい寄席が完成しました。
そこで話しているのは与太郎でした。与太郎のような年寄りも、信之助のような若手も、萬月師匠のような上方も、小夏のような女性も、年齢, 東西, 男女を問わず、姿を変えながらも落語が受け継がれていく。そんな形を見せてくれました。
それにしても、あの与太郎が「アタシのような年寄り」と言っていたのがほんとうに驚きです。時は流れていくんだと感じずにはいられません。
さて、二枚目の信之助は「菊比古」を襲名し、かけたのは「初天神」でした。うるさいだけでなく、色気もところどころ感じさせる、助六と八雲のハイブリッドっぽい落語だなと思いました。
そして最後に与太郎(9代目八雲)がやったのは「死神」。「流行り廃りもあるなかで、変わらないものもある」という枕は、変わりゆく落語界の姿を見るに、なかなか重みのある言葉ですよね。
そして「死神」をかけていると、与太郎にもついに「死神」が見えるようになってしまいました。彼にとっての死神は先代の八雲でした。こえーよ!
見届人、松田さん
松田さんはもともと噺家を志していたようです。しかし芽が出なかった。そんな彼を雇ってくれたのが7代目の八雲師匠。7代目とは戦争前に花見に来たようです。そんな彼も95歳になっているのは本当に驚嘆に値します。
そして8代目八雲のお見送りまでやり、9代目の誕生にも立ち会う。そんな松田さんはマジで見届人だなあとつくづく思いました。
最後は「落語がなくなるなんていっぺんも考えたことがねえ!」と樋口に対して力強く言い放つ与太郎の言葉で締めくくられました。与太ちゃんがこんなにかっこよくなるなんて…!
『昭和元禄落語心中』アニメ2期全話通じての感想
本当にいい作品に出会えたなと思います!
オープニング映像にもあるように、菊比古という1人の男性が全ての登場人物の中心に常にいました。「助六再び篇」というタイトルでありながら、やっぱり菊さんのストーリーなんだよなーと随所で感じられます。
とはいえ、菊さん1人では決してこの『昭和元禄落語心中』は成立しませんでした。みよ吉がいて、信さんがいて、そして小夏と与太郎がいた。だからこそストーリーは動き、落語は「心中」されることなく次の世代に受け継がれていったのでした。
与太郎は立派に成長し、落語は時代に合わせて形を変えて行きます。「困ったらお客さんのことを考えろ」という与太郎の言葉は落語に限らずあらゆる分野の指針足りうるものだと思います。
人は1人で生きられない。人間はどうしようもない存在だ。でもだからこそおもしろい。そんなことを追体験させてくれた、素敵なストーリーでした(≧∇≦)/